2021年12月13日月曜日

脳卒中患者における歩行パラメータに対する固有覚神経筋促通法(PNF)の有効性:系統的レビュー APMR 2019

 


脳卒中患者における歩行パラメータに対する固有覚神経筋促通法(PNF)の有効性:系統的レビュー







抄録
目的:脳卒中患者における歩行パラメータに対する固有角神経筋促通手技(PNF)の有効性に関する現時点でのエビデンスをレビューする.
データソース:CINAHL,MEDLINE,PubMed,the Physiotherapy Evidence Databaseの電子プラットフォームを,関連する検索語を用いて検索した.
研究の選択:歩行パラメータを評価項目として扱い,脳卒中後の集団にPNF手技が用いられている介入研究をレビューした.研究は両方の著者によって調査され統一見解に達した.文献検索から84篇の研究が見つかった.スクリーニング後,このレビューのための対象基準に合致したのは5研究だった.
データ抽出:データは両方の著者によって研究から抽出され,独立して調査された.方法論的室はランダム化比較試験のPhysiotherapy Evidence Databaseスケールと,非ランダム化比較試験についてはthe Quality Assessment Tool for Quantitative Studiesを用いて評価した.
データ統合:PNF手法を用いた治療すべての研究で,脳卒中患者における歩行の評価項目において統計学的有意に至った.研究のうちの3篇では,PNF手技で治療されたグループは,通常の理学療法を受けたグループよりも大きな改善を生じたこともみとめた.
結論:研究の方法論的質においていくつかの限界も見つかったが.現時点での研究では,PNFは脳卒中患者における歩行パラメータの改善のための有効な治療であることが示唆された.この領域における強固なエビデンスを構築するために将来の研究が必要である.

2021年11月29日月曜日

一過性脳虚血発作と軽症脳梗塞の患者における二次予防のためのサポートプログラム(INSPiRE-TMS):オープンラベル・ランダム化比較対照試験 Lancet Neurol 2020

 











一過性脳虚血発作と軽症脳梗塞の患者における二次予防のためのサポートプログラム(INSPiRE-TMS):オープンラベル・ランダム化比較対照試験














サマリー

背景 直近の脳卒中や一過性脳虚血発作の患者は,さらなる血管イベントに関してハイリスクであり,永続的な障害や死亡をもたらすかもしれない.二次予防のためのエビデンスに基づいた治療は利用できるが,多くの患者が推奨された行動変容を達成できず,長期における薬剤の予防目標に達することがない.我々は,二次予防の強化のためのサポートプログラムが,再発性血管イベントの頻度を減少させることができるかどうかを調査すること目的とした.

方法 INSPiRE-TMSは,ドイツの急性脳卒中ユニットのある病院とデンマークの脳卒中センター7施設で行われたオープンラベル・多施設・国際ランダム化比較対照試験である.研究参加から2週間以内の障害のない脳卒中または一過性脳虚血発作で,1つ以上の修正可能なリスクファクター(つまり,高血圧症,糖尿病,心房細動,喫煙)の患者を対象とした.コンピュータでのランダム化を用いて,患者を従来の治療にサポートプログラムの追加と従来治療のみに割り付けた(1:1).サポートプログラムは二次予防の目標へのアドヒアランスを改善させることを目的とした2年間にわたるフィードバックとモチベーションを高めるインタビューの戦略と8回の外来受診を用いた.主要評価項目は脳卒中,急性冠症候群,血管死の合計であり,治療企図解析(ランダム化を受け,研究参加を中止せず,少なくとも1回の追跡評価を受けた患者全員)で評価した.評価項目は,time-to-first-event解析を用いて毎年の追跡で評価した.すべての原因での死亡を安全性の評価項目としてモニターした.この試験はClinicalTrials.govに登録された.

知見 2011年8月22日から2017年10月30日まで,我々は2098人の患者を参加させた.そのうち,1048人(50.0%)がランダムにサポートプログラム群に割り付けられ,1050人(50.0%)が従来治療群に割り付けられた.サポートプログラム群の1030人(98.3%),従来治療群の1042人(99.2%)が治療企図解析で対象となった.解析された参加者の平均年齢は67.4歳で700人(34%)が女性だった.平均追跡期間3.6年のあと,大血管イベントの主要評価項目はサポートプログラム群の1030人のうち163人(15.8%)に生じ,従来治療群の1042人のうち175人(16.8%)に生じた(オッズ比0.92;95%信頼区間0.75-1.14).大血管イベントの合計の数はサポートプログラム群では209人,従来治療群では 225人(発生率の比0.93,95%信頼区間0.77-1.12;p=0.46)で,すべての原因の死亡はサポートプログラム群では73人(7.1%),従来治療群では85人(8.2%)に生じた(ハザード比0.85;95%信頼区間0.62-1.17).サポートプログラム群では,二次予防の目標に達した患者が多かった(例えば,1年間の追跡で血圧52%対42%[p<0.001],LDLで62%対54%[p=0.0010],身体活動で33%対19%[p<0.0001],禁煙で51%対34%[p=0.0010]).

解釈 障害のない脳卒中または一過性脳虚血発作の患者における強化した二次予防プログラムの提供は,二次予防の目標達成を改善したが,大血管イベントの発生率の有意な低下には結びつかなかった.退院後にすぐに二次予防の目標を達成しない患者の選択で,サポートプログラムの効果を調査するような将来の研究が必要である.

2021年11月2日火曜日

嚥下障害のある急性脳卒中後の経皮的内視鏡的胃瘻造設術と経鼻胃管チューブの無作為・前方視的比較 BMJ 1996

 

嚥下障害のある急性脳卒中後の経皮的内視鏡的胃瘻造設術と経鼻胃管チューブの無作為・前方視的比較

















抄録
目的−嚥下障害のある急性脳卒中後において経皮的内視鏡的胃瘻造設術と経鼻胃管チューブを比較すること.
デザイン−経腸栄養を必要とする急性脳卒中の入院患者のランダム化前方視的研究.
条件−大学病院1施設(ノッティンガム)と地域の一般病院1施設(ダービー).
対象−急性脳卒中から14日後に持続的な嚥下障害のある患者30人:16人が胃瘻栄養に,14人が経鼻胃管栄養に割り付けられた.
主要評価項目−6週間の死亡率;投与した栄養量;栄養状態の変化;治療の不成功;在院日数.
結果−6週後の死亡率は,胃瘻群は2人(12%)で,経鼻胃管群の8人(57%)よりも有意に低かった(P<0.05).胃瘻で栄養投与された患者(16人)はすべて,処方された栄養すべて投与されたが,一方,経鼻胃管の患者の10/14 (71%)は1日以上の栄養を喪失した.経鼻胃管の患者は,処方された栄養のうち,投与された栄養量が胃瘻群(100%)と比べて有意に少なかった(78%; 95%信頼区間63%-94%).胃瘻から栄養投与された患者は,経鼻胃管群と比べて,6週目でのいくつかの異なる基準に従って,栄養状態により大きな改善を示した.胃瘻群では平均アルブミン血中濃度が27.1g/L(20.7g/L〜23.9g/L)から31.4g/L (28.6g/L〜34.2g/L)に上昇した(P<0.003).さらに,胃瘻群では,治療不成功がより少なかった(0/16対3/14).胃瘻群から6人の患者が手順の6週間以内に退院し,対して,経鼻胃管群では0だった(P<0.05).
結論−この研究から,早期の胃瘻栄養が,経鼻胃管栄養よりも優れていることが示され,急性期の嚥下障害のある脳卒中患者に対する栄養療法の選択肢となるべきである.

2021年9月20日月曜日

脳卒中後けいれんの治療のための抗てんかん薬のランダム化比較対照試験:ネットワークメタ解析でのシステマティックレビュー Seizure 2018

 









脳卒中後けいれんの治療のための抗てんかん薬のランダム化比較対照試験:ネットワークメタ解析でのシステマティックレビュー











目的:脳卒中後のけいれんやてんかんを治療するために用いられる抗てんかん薬の有効性と忍容性に関する最良の参照可能なエビデンスを決定すること.
方法:MEDLINE,Embase,CENTRAL,ClinicalTrials.gov.およびOpengrey.euで,脳卒中後てんかんを治療するために用いられる抗てんかん薬のランダム化比較対照試験について検索した.以下の評価項目を検討した:無発作;有害作用の発生;有害作用による中止.方法論的な質は,the Cocherane Handbook for Systematic Reviews of Interventionsにしたがって評価した.共通の比較対象としてカルバマゼピン徐放製剤(CR-CBZ)を用いて,各抗てんかん薬の間で
調整間接比較を行った.
結果:対象となったランダム化比較対照試験は2篇だけであり,1篇はレベチラセタム(LEV)とCR-CBZを比較し,他方はラモトリギン(LTG)をCR-CBZと比較した.LEVまたはLTGはCR-CBZと比較して,無発作において有意差はみとめなかった.有害作用の発生は,LEVおよびLTGではCR-CBZと比べて少なかった.間接比較では,無発作に関して,LEVとLTGの間に差は示されなかった(オッズ比0.86;95%m信頼区間0.15-4.89).有害作用の発生は,LEVではLTGよりも多かった(オッズ比6.87;95%信頼区間1.15-41.1).有害作用による中止については,得られたオッズ比10.8に,幅広く非対称な信頼区間をみとめた(95%信頼区間0.78-149.71).
結論:種々の抗てんかん薬の間に,直接比較・間接比較から無発作においては差がみとめられなかった.恐らくは対象とした患者数が少ないためだろう.LEVとLTGはCR-CBZよりも忍容性が良好と思われ,LEVはLTGよりも有害作用を伴うようである.脳卒中後てんかんを治療するための抗てんかん薬の有効性と忍容性の強固なエビデンスを提供するためにさらなる研究が必要である.

2021年8月30日月曜日

脳梗塞急性期とハイリスクTIAにおけるクロピドグレルとアスピリン NEJM2018

 

脳梗塞急性期とハイリスクTIAにおけるクロピドグレルとアスピリン















抄録

背景

クロピドグレルとアスピリンの抗血小板剤併用療法は,軽症脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)後の最初の3ヶ月の間の最初の割合を減少させるかもしれない.中国人の集団における抗血小板剤併用療法の試験では脳卒中再発のリスクの減少が示された.我々は,国際的な集団でこの併用療法を試験した.

方法

我々は,ランダム化試験で軽症脳梗塞またはハイリスクTIAの患者を,初日にクロピドグレル600mgの初回投与量,その後は75mg/日とアスピリン(50-325mg/日)を服用する群と,同じ範囲の投与量のアスピリン単独に割り付けた.各群のアスピリンの用量は,施設の研究者によって選択された.時間生存解析における主要有効性評価項目は,主要虚血イベントのリスクの合計であり,これは90日目での脳梗塞,心筋梗塞,虚血性血管イベントによる死亡と定義した.

結果

各国の269の施設で合計4881人が参加した.試験は,患者の予想数の84%が参加した後で中止した.なぜなら,データ安全性監視委員会が,クロピドグレルとアスピリンの併用はアスピリン単独よりも90日目の主要虚血イベントのリスク低下と重篤な出血のリスク増大と関連すると判断したからである.主要虚血イベントは,クロピドグレルとアスピリンを投与された2432人の患者の121人(5.0%)に生じ,アスピリンとプラセボを投与された2449人のうち160人(6.5%)に生じ(ハザード比0.75;95%信頼区間0.59-0.95; P=0.02),ほとんどのイベントは最初のイベントから1週間の間に生じた.重篤な出血は,クロピドグレルとアスピリンを投与された患者のうち23人(0.9%)に生じ,アスピリンとプラセボと投与された患者のうち10人(0.4%)に生じた(ハザード比2.32;95%信頼区間1.10-4.87;P=0.02).

結論

軽症脳梗塞またはハイリスクTIAの患者において,クロピドグレルとアスピリンの併用を受けた患者は,アスピリン単独を受けた患者よりも,90日目の主要虚血イベントのリスクが低下したが,重篤な出血のリスクは増大した.

2021年7月6日火曜日

COVID-19後の神経学的症候群:後遺症の治療の意義 J Clin Neurosci 2021



 





COVID-19後の神経学的症候群:後遺症の治療の意義






















抄録
研究デザイン
 文献レビュー.
目的:神経学的後遺症によるCOVID-19後症候群の意味を説明する.それには,治療と,このグループの患者と,COVID-19に関連しないこのようなイベントを呈する患者の間に存在するかもしれない違いを含む.
方法:文献の非系統的レビューを,PubMedとScience Directのデータベースで,以下のキーワードを用いて行った.“Post-acute COVID-19 syndrome急性COVID-19後症候群”;“Neurological complications神経学的合併症”;“Neurologic Manifestations神経学的症状”;“COVID-19”;“Rehabilitationリハビリテーション”,および同意語で,演算子“AND”と“OR”で組み合わせて行った.
結果:COVID-19ウイルスの原因病原体,SARS-CoV-2は,ヒトのⅡ型肺細胞上のアンギオテンシン変換酵素2受容体と高い親和性がある.この受容体は,ニューロンとグリア細胞にもグリア細胞にも発現している.前述の機序と,その他のあまり明確ではない機序に基づいて,SARS-CoV-2には神経系に指向性があり,このことは,病気の軽症・中等症・重症の表現型の患者にみとめられた神経学的な症状,すなわち無嗅覚症,無味覚症,頭痛,脳血管障害,Guillain-Barré症候群,けいれん,脳症といった症状によって明らかであると述べられている.これは,重症の後遺症を生じさせることがあり,影響を受けた人では致死的な帰結さえあり得る.
結論:COVID-19によって生じる神経学的合併症は,頻度が高く,患者の機能的能力と生活を損なうリスクを呈する.これらの病態を疑うこと,代謝の変化と心血管リスクファクターの厳格なコントロール,これらの実体の効果的で安全な治療は,パンデミックを通じた現在の課題である.このような患者におけるリハビリテーションの経過は課題である.このことは,脳死のリスクとともに多臓器損傷によって生じる限界のためである.

2021年6月28日月曜日

COVID19後症候群と運動の潜在的な効果 Environ Res Public Health 2021

 

COVID19後症候群と運動の潜在的な効果









抄録:コロナウイルス病(COVID-19)は,severe acute respiratory syndrome-coronavirus-2 (SARS-CoV-2)感染によって生じ,治療が難しい未知の特有の病態を生じる.COVID-19後症候群はこのような難題の1つで,パンデミックの拡大につれてますますよくみられるようになってきた.最新の推定では,急性症状の時期を経験したSARS-CoV-2の患者の10-20%が,診断から12週を超えて疾病の影響を経験している.この新しい病態を調査する研究が始まっているけれども,いまだに診断的識別について深刻な懸念があり,最良の治療アプローチには限界がある.運動プログラムと身体活動レベルは,多くの慢性疾患において,臨床症状と予後のよく知られた調整因子である.このナラティブレビューでは,疾患のより良い知識に寄与できるCOVID-19後症候群についての最新のエビデンスをまとめ,定期的な運動がこれらの症状の多くをどのように改善し,どれだけCOVID-19の長期的な影響を軽減できるかもしれないかを説明する.

2021年5月23日日曜日

疲労感,息切れ,運動耐用能,認知機能を改善するためのCOVID-19後の患者に対するリハビリテーションの早期の経験−コホート研究 Chron Respir Dis 2021

 


疲労感,息切れ,運動耐用能,認知機能を改善するためのCOVID-19後の患者に対するリハビリテーションの早期の経験−コホート研究


抄録

COVID-19の持続する症状のある患者は,包括的回復プログラムを提供されるべきである.6週間の週2回の監督下でのリハビリテーションプログラムを完了した30人(平均年齢[SD]58[16]歳)は,運動耐用能,呼吸症状,疲労感,認知機能に有意な改善を示した.参加者は,漸増シャトルウォーキングテストで112m改善し,一定負荷シャトルウォーキングテストで544秒改善した.記録された重篤な有害事象はなく,症状の悪化に関連した脱落もなかった.COVID-19のリハビリテーションは,実行可能で,臨床的アウトカムを有意に改善させる.

2021年5月17日月曜日

新型コロナ感染症からの治癒:生存者は肺線維症のリスクがあるか? Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2021

 


新型コロナ感染症からの治癒:生存者は肺線維症のリスクがあるか?







抄録

新型SARS-CoV-2コロナウイルスは,COVID-19の原因であり,2019年12月に中国の武漢で最初に報告された.ウイルスは急速に拡大し,世界保健機構は2020年3月にパンデミックを宣言した.世界中で確定診断された何百万の症例があり,コロナウイルス感染が,回復した患者における慢性期の呼吸器症状や線維化疾患の相当な負担に関与する可能性についての懸念が増大しつつあり,かなりの議論がある.COVID-19の最初の症例が報告されたのは1年以内のことであるため,長期的な臨床的帰結についてのデータは未だに参照可能ではない.そして,長期的な帰結の予測については最大でも推測に留まる.しかしながら,圧倒的な数の症例と,多くの患者における疾患の重症度のために,COVID-19の長期的な影響の可能性を検討することの重大の必要性が生じている.このレビューでは,SARS-CoV-2の文脈におけるウイルスの損傷の線維化の機序に関する現時点での基礎と臨床データを調査する.コロナウイルス感染と線維化の経路の間のいくつかの交差する機序が議論され,患者のアウトカムを改善させるための標的となるかもしれない要因とプロセスに着目する.過去のコロナウイルスのアウトブレイクの感染後の後遺症の報告を,線維化疾患について関与する可能性危険因子の認識を改善という目標に向けて提示する.

2021年5月9日日曜日

脳卒中亜急性期で相当の脚の障害のある患者における非障害側下肢運動野の反復経頭蓋磁気刺激の効果:予備研究 J Rehabil Med 2015

 

脳卒中亜急性期で相当の脚の障害のある患者における非障害側下肢運動野の反復経頭蓋磁気刺激の効果:予備研究
















目的:脳卒中亜急性期後の相当の下肢障害のある患者の間での歩行機能に対する反復経頭蓋磁気刺激rTMSの効果を評価すること.
デザイン:シャム比較群を対象とした二重盲検・層別化・ランダム化試験.
参加者:初回脳卒中亜急性期後の片側片麻痺で,入院脳卒中リハビリテーションを行っている患者.
方法:本研究で使用された15日間の介入プログラムでは,rTMS(1Hz,15分)を非障害側半球の脚の運動野上に適用し,その後で45分間の理学療法を行なった.全体として,32人の参加者がランダムに,実刺激のrTMSとシャム刺激のrTMSのいずれかを受けるように割り付けられた.臨床評価として,the Postural Assessment Scale for Stroke Patients (PASS),the Performance Oriented Mobility Assessmentのバランスの下位スケール(POMA-b),Fugl-Meyer Assessment,Barthel Index(BI),Timed Up & Go testを含み,介入直前・直後に実施した.
結果:両群とも,すべての評価で継時的に有意な改善を示した.測定後の評価で,実刺激のrTMS群の患者は.シャム刺激のrTMS群の患者と比べて,PASS,POMA,BIのスコアでより大きな改善を示した.さらに,実刺激のrTMS群では,シャム刺激のrTMS群よりも多くの数の患者が,歩行能力を回復した.
結論:1 Hz rTMSの適用は,脳卒中亜急性期後の相当の下肢障害の患者において,歩行能力を改善するかもしれない.

2021年5月3日月曜日

嚥下障害のある成人に対する経皮的内視鏡的胃瘻造設術対経鼻胃管栄養(レビュー) Cochrane Database Syst Rev 2015


 嚥下障害のある成人に対する経皮的内視鏡的胃瘻造設術対経鼻胃管栄養(レビュー)


抄録

背景

 数多くの病態が消化管に沿った食物の通過を損なう.経鼻胃管栄養は古典的で,実績のある手法である.とはいえ,その長期的な使用は,鼻翼の病変や慢性鼻副鼻腔炎,胃食道逆流,誤嚥性肺炎といった合併症を引き起こし得る.もう1つの注入方法である経皮的内視鏡的胃瘻造設(PEG, Percutaneous Endoscopic gastrostomy)は,長期間,経腸栄養の必要性があると一般に用いられている.嚥下障害のある患者においてPEGについて高い必要性がある.とはいえ,経鼻胃管と比較した有効性・安全性について一貫したエビデンスはない.



目的

 嚥下障害のある成人に対して,経鼻胃管と比較したPEGの有効性と安全性を評価すること.



検索戦略

 我々は,開始から2014年8月までのThe Cochrane Library,MEDLINE,EMBASE,LILACSを検索し,対象領域の筆頭著者と連絡をとった.検索には言語の制約を設けなかった.



選択基準

 我々は,何らかの背景疾患で嚥下障害があり栄養サポートの適応のある成人に対するPEGと経鼻胃管を比較したランダム化比較対照試験を対象とすることを計画した.主要評価項目は,介入失敗(例えば,栄養投与の中止,チューブの閉塞や漏れ,治療アドヒアランス不良)である.



データ収集と分析

 我々は,The Cochrane Libraryから求められる標準的方法論的手法を用いた.二分変数と連続変数について,我々は,相対リスク(RR, risk ratio)と平均差(MD, mean difference)を,それぞれランダム効果統計モデルと95%信頼区間(CI, confidence interval)で用いた.我々は,I2>50%をもって統計学的異質性と推定した.



主な結果

 我々は,アウトカムデータのメタ解析16篇を作り出した参加者735人での11篇のランダム化比較対照研究を対象とした.メタ解析から,介入失敗の主要評価項目は,8研究,参加者408人で,経鼻胃管に比べてPEGの参加者で割合が低く(相対リスク0.18, 95%信頼区間0.05-0.59),この差は統計学的に有意だった.この評価項目について,我々はPEGの手技によって,プル法プッシュ法報告なしによる研究にサブグループ化した.我々は,プル法サブグループではPEGが良好な有意差をみとめた(相対リスク0.07,95%信頼区間0.01-0.35,3研究,参加者90人).プッシュ法サブグループは臨床研究1篇しかなく,結果はPEGが良好だった(相対リスク0.05,95%信頼区間0.00-0.74,1研究,参加者30人).手技が報告されていない場合,統計学的有意差をみとめなかった(相対リスク0.43,95%信頼区間0.13-1.44,4研究,参加者285人).


 二次評価項目は,死亡率(相対リスク0.86,95%信頼区間0.58-1.28,参加者644人,9研究,とても低い質のエビデンス),いずれかの追跡時点での何らかの有害イベント(治療企図解析,相対リスク0.83,95%信頼区間0.51-1.34,参加者597人,6研究,中等度の質のエビデンス),(誤嚥性)肺炎を含む特定の有害イベント(相対リスク0.70,95%信頼区間0.46-1.06,参加者645人,7研究,低い質のエビデンス)には統計学的有意差がなく,終了時のベースラインからの体重変化や上腕周囲径を含む栄養状態でのメタ解析でも統計学的有意差はなかった.しかし,上腕周囲径のベースラインからの変化のメタ解析でPEGが良好(平均差1.16,95%信頼区間1.01-1.31,参加者115人, 2研究)とPEGグループで血清アルブミン濃度がより高い(平均差6.03,95%信頼区間2.31-9.74,参加者107人)というエビデンスがあった


 経腸栄養の期間の二次評価項目のメタ解析については統計学的有意差はなかった(平均差14.48,95%信頼区間-2.74-31.71,参加者119人, 2研究).参加者133人での 2研究における生活の質(EuroQol)のメタ解析では,不便さ(相対リスク0.03,95%信頼区間0.00-0.29),不快感(相対リスク0.03,95%信頼区間0.00-0.29),身体イメージの変化(相対リスク0.01,95%信頼区間0.00-0.18; P=0.001),社会活動(相対リスク0.01,95%信頼区間0.00-0.18)について,介入はPEGが良好であり,つまり,PEG介入で不便さや不快感,社会活動の障害を感じた参加者がより少なかった.しかしながら,疼痛や使い方の学習の容易さ,あるいは在院日数の二次評価項目( 2研究,参加者381人)では群間の差はなかった.



著者らの結論

 PEGは,介入失敗の可能性が低く,内視鏡的手技が経鼻胃管と比べて,より有効で安全であるかもしれないことを示唆している.比較群の間に死亡率や,誤嚥に関連した肺炎を含む有害イベントには有意差はなかった.将来の研究では,基礎疾患や年齢,性別を含む人口統計学的データ,および胃瘻造設手技の詳細を含めるべきである.


2021年4月14日水曜日

脳卒中後の歩行障害に対する歩行訓練と組み合わせた両側の下肢運動領域上に適用した高頻度反復経頭蓋磁気刺激:予備的研究 Brain Inj 2013

 

脳卒中後の歩行障害に対する歩行訓練と組み合わせた両側の下肢運動領域上に適用した高頻度反復経頭蓋磁気刺激:予備的研究







抄録
目的:ダブルコーンコイルは,下肢運動領域への磁気刺激の投与を可能にし,その領域の神経活動性を修飾する.コイルでの促通性反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)と理学療法の併用適用が,脳卒中後の歩行機能を改善するであろうことが期待される.この研究の目的は,脳卒中後の歩行障害に対するダブルコーンコイルでのrTMSと運動訓練を特徴とする入院患者のプロトコルの臨床効果を明らかにすることである.
被験者と方法:歩行障害のある脳卒中後片麻痺患者19人が研究された(年齢56.2±11.9歳).13日間の入院中に,各患者は高頻度rTMSとトレッドミル訓練を主体とする運動訓練を20セッション行った.1回のrTMSのセッションで,10-HzのrTMSを2000パルスを,ダブルコーンコイルを使って両側の下肢運動領域に与えた.歩行速度,生理学的コスト指数(PCI, Physiological Cost Index),Timed Up and Go Test(TUG)を入院日と退院日に評価した.
結果:プロトコルはすべての患者で有害作用なく完了した.併用療法は,歩行速度を有意に向上し(p<0.05),PCIを有意に低下し(p<0.05),TUGの実行時間を短縮した(p<0.05).
結論:高頻度rTMSと運動訓練を主体とするプロトコルは安全で実行可能であり,脳卒中後の歩行機能を改善できる.

2021年4月5日月曜日

脳卒中誘発免疫抑制と脳卒中後感染症 Stroke Neurol Vasc 2018

 


脳卒中誘発免疫抑制と脳卒中後感染症













抄録

脳卒中後に感染症が生じることはよくあり,このような患者の機能的予後不良と強く関連している.脳卒中後感染症の有効な管理のためのアプローチは依然として不十分であり,脳卒中を生じた患者のための予防的対感染症戦略について差し迫った必要性を示している.脳卒中が全身の免疫反応を障害し,感染症への脆弱性を高めること示すエビデンスが表れつつあり,これは,傷害された免疫防御の修飾が有効だろうということを示唆している.このレビューでは,我々は,予防的抗生剤を用いた脳卒中後感染症を予防するための過去の試みと,脳卒中誘発免疫抑制の現在の理解をまとめた.脳卒中の免疫機序についての更なる解明は,免疫系を調節することを介して脳卒中後の感染症を闘う新しい治療の個別化したデザインへの道筋を示すだろう.

2021年3月17日水曜日

誤嚥性肺炎 NEJM 2019


 誤嚥性肺炎は,区別できる独立した存在物としてよく見なされているわけでなく,市中肺炎も院内肺炎も含む連続体の一部と考えられている.誤嚥性肺炎の数は,市中肺炎の症例の5%から15%と推定されているが,院内肺炎についての実態は参照不能である.誤嚥性肺炎の確固たる診断基準は存在せず,結果として,この病態の研究には不均一な患者集団が対象となる.

 少量の口腔咽頭分泌物の誤嚥は,健常者での睡眠中は正常であるが,微小誤嚥は多くの肺炎で主要な発症機序である.細菌の繁殖した口腔咽頭内容物や上部胃消化管内容物の大量の誤嚥(多量誤嚥)は,誤嚥性肺炎の必須条件である.患者の症状や疾病の治療に栄養する変数には,細菌の病原性,反復するイベントのリスク,それが生じた場所(介護施設,病院,地域)がある.この連続体に応じて,誤嚥性肺炎であると識別された患者は,通常は,多量誤嚥に対する危険因子での臨床的表現型と特徴的な解剖学的な肺の部位の関与を呈する.誤嚥症候群には,気道や肺実質を巻き込んで,さまざまな臨床的表現型を引き起こすかもしれない.

 このレビューでは,肺実質に関わる誤嚥,主に誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎に着目する.血液や異物のような非感染性物質の誤嚥も重要である.誤嚥性肺炎は,特定の微生物によって生じる感染であるが,一方,化学性肺臓炎は刺激性の胃内容物への炎症反応である.細菌と肺の間の相互作用の我々の理解は改善してきた.我々はこの改善を,誤嚥性肺炎の微生物学と発症機序の概念の変化に沿って調査する.我々は,誤嚥性肺炎と化学性肺臓炎の両方の臨床的特徴・診断.治療・予防,さらに危険因子を検討する.

2021年1月11日月曜日

混合食品の口腔咀嚼行動,知覚,および喫食量 Trends in Food Science & Technology 2020

 















混合食品の口腔咀嚼行動,知覚,および喫食量

抄録

背景:食摂食者が,食べ物や一口の中に,異なる組成と特性の食べ物を組み合わせることはよくある;例えば,ペースト状のものを塗ったパンやドレッシングをかけた野菜である.このような食べ物の組み合わせを混合物という.

見解とアプローチ:このナラティブレビューでは,(1)食べ物の小片への付加,(2)随伴する食べ物の付加が,咀嚼行動や感知覚,混合食品の摂取にどのように影響するに着目している.診療への示唆,知識のギャップ,将来の展望も議論する.

重要な知見:混合食品の口腔咀嚼行動は,単独の食物の特性を変えることで調節できる.小片を追加すること,随伴する食物を追加すること,単独の食物の特性,とくに機械的特性や形状,粘度を変化させることは,食べる速度とすなわちエネルギー摂取に影響する有望なアプローチである.さらに,混合食品の知覚は複雑である.というのも,口腔内の食物の間の相互作用は,知覚に大いに変化を示すからである.そのため,食物の間を区別する感度は,食物を随伴する食物と一緒に評価すると減弱する.

結論:このレビューでは,咀嚼中の混合食品の構造的な位相が,混合食品の口腔咀嚼行動・知覚・喫食量にどのように関与するかに注目する.これは,健康的な食品や持続可能な生産食品のデザインにおいて大いに関心を持たれているが,それについて最良の感覚の質が依然として難題をもたらすことが確認されている.